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角上楼 計4回、延べ8泊

昭和初年の建築なのに、行くたびに進化してた。
でも「進化」のむずかしさも痛感した宿です。




↑宿のアイドル猫(兼・営業部長)タンと私。ダンナがこの写真を見て
これも仕事と思ってじっと耐えている男の表情だ」って。

住所 愛知県田原市福江町下地38
電話 0531-32-1155
客室数 11室
HP
http://www.e-yado.co.jp
食事場所 朝夕:個室
連泊スコア★☆☆☆☆    昼食はなし。近所にもこれといって食べられる場所がなく、近くの駄菓子屋でお菓子を買って飢えをしのいだ記憶が。
 
ひとり泊まり:OK(ただし5,775円割り増し)
子供連れ:OK



Public Space
築80年! レトロで味のある佇まいがぐっときました













↑二階廊下の火鉢。飾りじゃなく、本気の暖房器具。


※写真はすべて、初回(2003年2月)に宿泊した時のもの。
 現在はかなり雰囲気が変わっています。
きっかけは、テレビの温泉番組。
宿の施設よりも、
ふぐ料理があまりにもおいしそう
のけぞった私たちは、番組が終わるのも待てずに
予約の電話を入れました。

行ってみたら、なにしろ
いろんな意味でこってり味のある宿で、

*ふぐが期待以上のおいしさ
*中居さんが素朴で親切で面白い
*可愛い猫がいる
*部屋もとっても居心地がいい


とあって、以降、ダンナの誕生日月の1月に行くのが恒例となり
これまで4回宿泊しました。
(伊豆・箱根方面以外でここまでリピしているのは、ここだけです)

←宿の玄関。ご覧のとおり昨今のおしゃれ系旅館とは真逆の、おじいちゃんの家に遊びに来たようなタイムトリップ感。
しかも、狙って作り込んだいやらしさがないのがいいです(
だってリアルに古いんだから)。

←玄関を入ってすぐがお茶の間というか帳場というか。
ここでお茶を出されて、奥の部屋に案内されました。
普通のうちみたいで、逆に新鮮でした.。

以下は、宿の方からうかがったお話です。


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宿は昭和元年に立てられた建物で、化粧品会社勤務のサラリーマンだったご主人が平成9年に親から継いだ時は、幽霊屋敷のようだったとか。

その年の
年間(一年、ですよ)の宿泊客はたった5人で、
しかもその5人全員が「
なんじゃこれゃあ!」と激怒して帰ったそうです(あまりにもボロくて)。

だけど、廃業するにもご主人の愛着が強すぎてできず。

せめて、「
スリッパをはかないで廊下を歩ける宿にしたい」と思って、
洗剤が使えないほど古い木材の廊下を、1枚1枚、
ご主人自ら重曹で拭いて米ぬかでツヤを出して、
館内すべての床を、いやというほど磨きぬいたのだそうです。
「お金はないけど暇はあったので」。

そしてお金が工面できると蛍光灯を電球に変え、壁を塗り…
とリフォームしていくうち
この間の抜けた古さがいい(ご主人談)といってくれるお客様が、口こみでいらっしゃるようになった」。
とのことです。

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このお話、本当に感動しました。「磨く」ことに思いをこめたからこそ、これだけ古くても不潔感がまったくないんだということがわかりました。

私が好きなのは、中居さんたちの素朴な人柄。

年配の方が多いのですが地元の方たちらしく、素朴で気取らず、明るく親切。
食事の時に日本酒を注文したら、
やけにこそこそ持ってくるのでどうしたのかと思ったら
このお酒あとちょっとしか残ってないから、
ただでいいわ。板場にはヒミツ


あと、朝食の時にかわいい足袋をはいているのをほめたら、足袋自慢が止まらなくなった若い中居さんとか…

なんか、そういうゆるさがたまらなく居心地よかったんです。

でも「ちょっとずつリフォーム」スタイルは人気宿となった後も続いていて、泊まるたびにフロントや館内がどんどん変わっていました。
お茶の間風だった帳場はカフェ風になり
4年目にはとうとう、人気建築家によるデザイナーズ旅館風別館までできて(以下
「NEW ROOM]の項参照)。
Guest Room
新館ができるまで、唯一のお風呂付きの部屋でした








内風呂に大きな窓がついた「なんちゃって露天風呂」でしたが、これはこれでそれなりに開放感があり、落ち着いて入れました


建物がコの字型になっていて、中庭をはさんだ向こうが帳場、右手が

板場。中庭を眺めていると、夕食時に板場を出入りする中居さんの

姿が見えたり(当時は部屋食だったので忙しそうだった)、中庭でぶら

ぶらしている猫のタンちゃんがいたりと、なかなか飽きない眺めでした。

(そのぶん、中庭から部屋が見えるわけで、そういうのが気になる方は

嫌かもしれません)

この、囲炉裏のある和室が食事室で、隣にベッドルーム。奥に卓

袱台が置かれた小さな和室があります。




囲炉裏のお部屋は、2回目の宿泊時には、座卓がこんな椅子

になっていました。でもこの椅子はなかなか座り心地がよく、「

こっちのほうがいいね!」と喜んでいたのですが、次に行った

時は部屋食でなく、お食事所で食べるようになっていたのでした…。






Dinner
フグが、めちゃウマなんですわ!!!










この焼きふぐ刺しがとにかく絶品!
テレビの温泉番組を見て特にしびれたのがこの「焼きふぐ刺し」。
厚みのあるぽってりとした刺身に薬味をのせ、
網で一瞬、焼いて食べる。
一瞬で、香りと旨みがぎゅっと凝縮され、噛みしめると
「頬っぺが喜んでいる~~~」と叫びたくなるおいしさでした


もちろん、白子も普通のふぐ刺しも◎
白子も、ちょっと炙って食べました。
新鮮で身がしっかりしてるからきれいに焼けて、
薄皮一枚の下はとろとろで。
そしてここで初めて、ふぐ刺しのおいしさに開眼しました…
ああ食べに行きたい。

おじやは宿の人がつくってくれる
二度目の宿泊の時、まだ新米っぽい女性が
おじやを作ろうとして思いつめた表情で
「…自信がないので、板場に持って行っていいですか」。爆笑でした。板さんがつくったおじやはもちろん文句なしの極上のできばえでしたよ。







New Room
別館 翠上楼の「福寿」











i訪れるたびにどんどん変わっていく角上楼。
ただ3回目、あの味のある茶の間が消え、お食事どころができて、伊豆・箱根あたりの流行宿と似た感じになってきたなあ、と感じ始めたあたりから、微妙な気持ちになってはいました。

だって、2時間足らずでそういう宿が山ほどあるエリアから、わざわざ何時間もかけて角上楼に足を運ぶのは、そこにしかない独特のゆる~い時間が流れていたから。
それがどんどん失われているように感じ始めたからです。

でも大好きな宿であることに変わりはなかったから、2005年6月に新館が完成すると聞いて、そりゃ楽しみにしていました。そこで翌年1月、恒例のダンナの誕生日月に宿泊しました。

新館は離れ風のつくりになっており、メゾネットの「翠上楼」、平屋造りの「雲上楼」があります。私たちは、
どうせなら一番いいお部屋に泊まりたいと思い、メゾネットでも一番広い「福寿」を予約。わくわくして訪れると…

…このように、
まるで角上楼じゃないみたいなお洒落なお部屋でびっくりしました。

広さも申し分ないし、新館のすぐ近くにこれも立派な、というかゴージャスな大浴場ができていました(それ以前は、2~3人くらいしか入れない貸し切り風呂だけでした)。

とにかく、あまりに違いすぎて…。
何よりデザインのテイストが、伊豆や箱根によくある流行の宿とまったく同じ
(それもそのはず、「あせび野」「吟遊」を手がけた石井建築事務所の設計だと後に知りました)
おしゃれだけど、素敵だけど、

角上楼のオリジナリティがどこにも感じられない気が。

そして部屋数が倍増した分、スタッフも増えたのでしょうが、前回までのあの味のある楽しい年配の中居さんたちが見当たらなくて、
そつはないけどマニュアルチックな若い女性スタッフが多くなってしまったのもさびしかった。

一番がっかりしたのは、部屋のお風呂のお湯の出が悪く、時間をかけても湯船の半分くらいしかたまらず、時間がたつと冬なのですっかりさめてしまい、往生したこと。

タイミングが悪かったのでしょうが、何度フロントに電話しても、誰も出なくて、しかたなくぬるくて少ないお風呂に無理に入って、風邪をひきそうになりました。


大浴場も、豪華で広くて素敵なお風呂だったのですが、なにしろ人が多くて…。

そしてロッキングチェアやソファ、暖炉があるお洒落な湯あがり所がありましたが、
1月だというのに暖炉には火の気配もありませんでした。つまり、たんなる演出(演出でもかまわないけど、だったらちゃんと火を入れて欲しい、と思う…。)

このように、いろいろとがっかりすることがあり、それ以降、行ってません…。

ただ、今思うのはこの新館が、本館とは違う意味でご主人のいろんな願いの結晶なんだということ。たまたま私たちが角上楼に期待してたものとは違うだけで、素敵なお部屋であることは間違いないと思いますし。

ですから
今度行くなら、本館の桐の間にすると思います。
お風呂あがりに中庭をぼんやり眺めて猫を探して、
夕暮れが近づくと中居さんが忙しく廊下を走り回る姿を見て
「もうすぐあのふぐが食べられるんだなあ」とワクワクする、
そういう時間がなくては、ここに泊まる意味がない気がしています。

私たちにとっての角上楼は、本館の桐の間なんだな、と再確認した4回目の宿泊でした…



Cat!






二度目に行ったら増えていた、新顔の猫ちゃんたち。
 タンちゃんと違ってプロ意識が薄く(?)、お部屋に侵入してはスタッフに怒られてました。
お客さんは怒るどころか、大喜びでしたが。





中庭の木に登ったら降りられなくなり、途方にくれている新人の猫ちゃん。どうやら、おバカキャラらしい…それもまたカワイイ



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